「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 上映中 12月12日(木)終了予定
【『そこのみにて光輝く』呉美保監督、9年ぶりの長編作品!】
『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』で高く評価されてきた呉美保監督が、約9年ぶりとなる長編作品のテーマに選んだのは、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大さんによる実録ノンフィクション「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」。耳のきこえない母ときこえる息子の物語を点描のように繊細に紡いでいく。
脚本を担当したのは、『正欲』 『アナログ』(23)、『とんび』(22)等を手掛ける港岳彦。そして、主演を務めるのは『キングダム』シリーズ、『東京リベンジャーズ』シリーズ等の話題作から、作家性の強い監督作等、幅広い作品に出演し、今年は6本の出演作品が公開するなど俳優としてチャレンジを続ける吉沢亮。本作でも難役に挑戦、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現する。
才能あふれるスタッフ、キャストによって紡がれる誰もが共感する母と息子の物語が公開となる。
〈STORY〉
宮城県の小さな港町、耳のきこえない両親のもとで愛されて育った五十嵐大。幼い頃から母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つが・・・。
出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、鳥丸せつこ、でんでん
監督:呉美保 脚本:港岳彦
2024年/105分/日本/ビスタ
配給:ギャガ
「リトル・ワンダーズ」 上映中 12月12日(木)終了予定
【デビュー作でカンヌやトロントほか映画祭をトリコに!!】
16mm フィルムに収められた、わくわくがとまらないネオ・アドベンチャー! 数多く存在している、こどもが活躍する映画群に新たなる傑作として誕生した『リトル・ワンダーズ』。
第76 回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されると、監督週間とカメラ・ドール部門に選出。次いで、第 48 回トロント国際映画祭ではミッドナイト・マッドネス部門のクロージング作品に抜擢された。16mm フィルムでの撮影や美術を駆使した“レトロフューチャーな世界観”の作り込みと“魅力的な登場人物達”の愛くるしさは、長編デビュー作とは思えないほどに見事な完成度で、各国の映画祭を魅了。監督を務めたウェストン・ラズ―リは、カリフォルニア芸術大学でグラフィックデザインやファッションデザイン等を学んだ後に、映画製作を始めたマルチな才能を持ち合わせる新星。フィービー・フェロ、チャーリー・ストーバー、スカイラー・ピーターズ、ローレライ・モートといった 10 代前半のキャスト達も監督と同じく、今後の活躍を期待させる瑞々しい輝きを放ち、スクリーンの中からこれでもかと観客を魅了してくれる。
『グーニーズ』+『ロッタちゃん』シリーズ =大人の好奇心を刺激する 悪ガキッズから学ぶ“わんぱくのすゝめ”
パイを手に入れる冒険に出た悪ガキ 3 人組が、思いもよらず謎の魔女集団に遭遇。仲間に加わったちびっこ魔女と共に立ち向かうことになる。そして、簡単なように思えたクエストはとんでもない事態に――。こども達の冒険や成長を描いた『グーニーズ』、こどもから見た世界やその無垢な姿を映した『ロッタちゃん』シリーズ。それらの作品に仲間入りする本作は、一見すると RPG ゲームの様な冒険物語を想像させるが、“おとぎ話” “西部劇” “ケイパームービー” “フォーク・ホラー” などのジャンルもミックスされたネオ・アドベンチャー。「究極のこども映画を作りたい」という発想と監督自身が子供の頃に好きだった、スパイごっこやボードゲームの延長線上にある作品として創り上げられた。そういった原体験的な遊び心を基に、無邪気かつ大胆に行動する登場人物のわんぱくな姿は、観る者を「彼らの一員になりたい」と没入させ、かつての自分を重ね合わせた大人達の好奇心を刺激する。
〈STORY〉
悪ガキ 3 人組“不死身のワニ団”、アリス(フィービー・フェロ)、ヘイゼル(チャーリー・ストーバー)、ジョディ(スカイラー・ピーターズ)は大の仲良し。ある日、ゲームで遊ぶ代わりとして、ママの大好きなブルーベリーパイを手に入れに行くが、必要な卵を謎の男(チャールズ・ハルフォード)に横取りされる。奪い返すために男を追いかけた 3 人は、魔女(リオ・ティプトン)率いる謎の集団“魔法の剣一味”に遭遇し、怪しい企みに巻き込まれてしまう。森で出会った、魔女の娘ペタル(ローレライ・モート)を仲間に、悪い大人に立ち向かう 4 人…果たしてこどもたちの運命は?無事にパイを手に入れ、ゲームをプレイできるのか…!?
出演:リオ・ティプトン、チャールズ・ハルフォード、スカイラー・ピーターズ、フィービー・フェロ、ローレライ・モート、チャーリー・ストーバー
監督・脚本・製作:ウェストン・ラズーリ
2023 年/114分/アメリカ/シネマスコープ/PG12
配給:クロックワークス
「HAPPYEND」 上映中
【ヴェネチア国際映画祭 正式出品 空音央監督 長編劇映画デビュー作】
ユウタとコウは幼馴染で大親友。いつもの仲間たちと音楽や悪ふざけに興じる日々を過ごしている。高校卒業間近のある晩、こっそり忍び込んだ学校で2人はとんでもないいたずらを仕掛ける。翌日いたずらを発見した校長は激昂し、学校に四六時中生徒を監視する AI システムを導入する騒ぎにまで発展。この出来事をきっかけに、コウは、それまで蓄積していた、自身のアイデンティティと社会に対する違和感について深く考えるようになる。その一方で、今までと変わらず仲間と楽しいことだけをしていたいユウタ。2人の関係は次第にぎくしゃくしはじめ…。
決して遠くないXX年後の日本。多種多様な人々が当たり前に暮らすようになっている一方で、社会には無関心が蔓延し、むやみやたらに権力が振りかざされている。それはまさに今の世の中と地続きであり、あまりにもリアリティのある未来だ。そんな世界で当たり前だった“友達”という存在が揺らいでいくさまを、環境音やテクノなどが織り交った独特なサウンドと、圧倒的にエモーショナルな映像美で見事に表現。脈々と受け継がれる青春映画の系譜でありながらも、これまでに見たことのない切り口で“友情の危うさ”を描いた青春映画の新たなる金字塔が誕生した。
〈STORY〉
今からXX 年後、日本のとある都市。
ユウタとコウは幼馴染で大親友。いつもの仲間たちと音楽や悪ふざけに興じる日々を過ごしている。こんな幸せな日常は終わらないと思っていた。
高校卒業間近のある晩、いつものように仲間と共にこっそり学校に忍び込む。そこでユウタはどんでもないいたずらを思いつく。「流石にやばいって!!」と戸惑うコウ。「おもろくない??」とニヤニヤするユウタ。
その翌日、いたずらを発見した校長は大激怒。学校に四六時中生徒を監視する AI システムを導入する騒ぎにまで発展してしまう。この出来事をきっかけに、コウは、それまで蓄積していた、自身のアイデンティティと社会に対する違和感について深く考えるようになる。その一方で、今までと変わらず仲間と楽しいことだけをしていたいユウタ。
2人の関係は次第にぎくしゃくしはじめ…。
出演:栗原颯人、日高由起刀、林裕太、シナ・ペン、ARAZI、祷キララ、中島歩、矢作マサル、PUSHIM、渡辺真起子/佐野史郎
監督・脚本:空音央
2024年/113分/日本、アメリカ/ビスタ/PG12
配給:ビターズ・エンド
「動物界」 12月6日(金)より上映
【セザール賞(フランス・アカデミー賞)最多12部門ノミネート】
2023年、フランスのアカデミー賞と呼ばれるセザール賞で、一本の破格の衝撃作が異彩を放った。
フランス映画のイメージを根底から覆すその作品『動物界』は、日本でも話題となった『落下の解剖学』を凌ぐ最多12部門ノミネートを果たし、同国で観客動員100万人越えの大ヒットを飛ばした。
その舞台は、人間が様々な動物に変異する奇病が蔓延している近未来。人種差別、移民、ルッキズム、感染症など現代的なテーマを内包し、ファースト・シーンから観客を釘付けにする”突然変異”のアニマライズ・スリラーが、あなたの想像力を刺する。
〈STORY〉
近未来。人類は原因不明の突然変異によって、徐々に身体が動物と化していくパンデミックに見舞われていた。
“新生物”はその凶暴性ゆえに施設で隔離されており、フランソワの妻ラナもそのひとりだった。しかしある日、移送中の事故によって、彼らは野に放たれる。フランソワは16歳の息子エミールとともにラナの行方を必死に探すが、次第にエミールの身体に変化が出始める…。
人間と新生物の分断が激化するなかで、親子が下した最後の決断とはーー?
出演:ロマン・デュリス、ポール・キルシェ、アデル・エグザルコプロス、トム・メルシエ、ビリー・ブラン
監督・脚本:トマ・カイエ
2023年/128分/フランス/シネマスコープ/PG12
配給:キノフィルムズ
「本心」 12月13日(金)より上映
【監督 石井裕也 × 主演 池松壮亮 × 原作 平野啓一郎】
世界に誇る日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督が、技術が発展し続けるデジタル化社会の功罪を鋭く描写。今と地続きにある少し先の将来、“自由死”を望んだ母の“本心”を知ろうとすることをきっかけに、進化する時代に迷う青年を映し出す。
今回、主演を務めるのは、近年ますます活動領域を拡張している俳優・池松壮亮。時代に置いてけぼりにされた青年・石川朔也を、あえて地に足の着かない不安定な演技で見事に体現。池松演じる朔也の母 秋子役には数多くの名作映画に出演してきた俳優・田中裕子が扮し、生身/VF(ヴァーチャル・フィギュア)という未知の“2役”に挑み、圧倒的な存在感を見せつける。そして、俳優として成長著しい三吉彩花が、秋子の素顔を知るキーパーソンであり、過去の傷を抱えるミステリアスな女性・三好を好演。彼女が朔也の人生に与える影響とは…。さらに、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡といった名実ともに日本映画界を牽引するオールスターキャストが集結。
リアルとヴァーチャルの境界が崩れ、利便性が異常進化し続ける今、時代の変化に彷徨う人間の《心》と《本質》を描く、革新的なヒューマンミステリーが誕生した。
〈STORY〉
「大事な話があるの」――そう言い残して急逝した母・秋子(田中裕子)が、実は“自由死”を選んでいた。幸せそうに見えた母が、なぜ自ら死を望んでいたのか…。どうしても母の本心が知りたい朔也(池松壮亮)は、テクノロジーの未知の領域に足を踏み入れる。生前のパーソナルデータをAIに集約させ、仮想空間上に“人間”を作る技術VF(ヴァーチャル・フィギュア)。開発している野崎(妻夫木聡)が告げた「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安を覚えつつ、VF制作に伴うデータ収集のため母の親友だったという女性・三好(三吉彩花)に接触。そうして“母”は完成、朔也はVFゴーグルを装着すればいつでも会える母親、そしてひょんなことから同居することになった三好と、他愛もない日常を取り戻していくが、VFは徐々に“知らない母の一面”をさらけ出していく……。
出演:池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、中野太賀、田中泯、綾野剛/妻夫木聡/田中裕子
監督・脚本:石井裕也
原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
2024年/122分/日本/シネマスコープ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
「ロボット・ドリームズ」 12月20日(金)より上映
【第96回アカデミー賞®長編アニメーション映画賞ノミネート】
アニー賞、ヨーロッパ映画賞、ゴヤ賞ほか名だたる映画賞を席巻。孤独なドッグと、その元へやってきたロボットとの友情を描き、世界中の批評家と観客から愛された本作。監督を務めたのはヨーロッパを代表する名匠パブロ・ベルヘル。アニメーション映画へは初挑戦ながら、「制約のないアニメーションで、物語を描く無限の可能性を探求したかった」と語るとおり、切ないながらも温かく、観るものの心を揺さぶる類まれな傑作として結実させた。
〈STORY〉
大都会ニューヨーク。ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたテレビCMに心を動かされる。数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱――それは友達ロボットだった。セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋……ニューヨークの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは―― 。
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
2023年/102分/スペイン・フランス/ビスタ
配給:クロックワークス
「私にふさわしいホテル」 12月27日(金)より上映
【文学史上最も不遇な新人作家の、文壇下剋上エンタテインメント!】
主演 のん × 監督 堤幸彦 × 原作 柚木麻子。
新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく。
ズタボロになっても何度でも立ち上がり、成功を己の力で引き寄せていく加代子の奮闘に、手に汗を握りながらいつしか虜になっていく。驚いて、笑えて、スカッと元気をもらえる“痛快逆転サクセスストーリー”が誕生した。
加代子の大学の先輩であり、加代子の根性と作家としての可能性を認めている最大の理解者(でも時に裏切る!)であり、大手出版社のエリート編集者・遠藤役に、田中圭。加代子が出版業界で生きていけないようあの手この手で加代子を追い詰めていく因縁の相手にして出版業界を牛耳る大御所作家の東十条宗典役を滝藤賢一が演じ、加代子VS東十条の因縁対決は見どころ! その他、東十条宗典の行きつけの一流クラブのママを田中みな実、10年に一人の才能を持ち文壇の話題をかっさらう天才高校生小説家有森役を服部樹咲、東十条が唯一頭の上がらないじゃじゃ馬娘役を高石あかり、本だけを愛する超有名カリスマ書店員須藤役を、のんとは3度目の共演となる橋本愛、東十条の行きつけのクラブにお忍びで来ているトレンディー俳優役を橘ケンチ、クリスマスに遠藤が家族で宿泊するホテルの実直なホテルマン役を光石研、東十条を親身に支え貞淑な妻役を若村麻由美など実力派&超豪華な俳優陣の面々が超個性的なキャラクターを演じる! 加代子の文壇下剋上の行方はいかに!?
〈STORY〉
新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。
名だたる文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、文豪気分に浸り原稿用紙に向かっていた加代子の元に、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)が訪れる。遠藤から、上階に東十条がカンヅメ中だと聞かされた加代子は、「東十条の原稿が上がらなければ私にもチャンスが……」と、不遇の元凶である東十条への恨みを晴らすべく、奇想天外な作戦で執筆の邪魔をし、掲載のチャンスをつかみ取ることに成功する。
この事件から、加代子と東十条の因縁の対決が始まる!
一向に作家デビューできない加代子は東十条と戦い、自分の才能と戦い、デビューできるかと思いきや蹴落とされ、ついには味方であると思っていたはずの遠藤の裏切り・・・
「私は私の夢を叶える!」と、何度でも立ち上がり、不屈の精神と荒唐無稽な奇策で理不尽な文学界をのし上がっていく加代子。果たして、加代子の作家への道は!?
出演:のん、田中圭、滝藤賢一、田中みなみ、髙石あかり、服部樹咲/橋本愛/橘ケンチ、光石研、若村麻由美
監督:堤幸彦
原作:柚木麻子「私にふさわしいホテル」(新潮文庫)
2024年/99分/日本/ビスタ
配給:日活 / KDDI
「至福のレストラン/三つ星トロワグロ」 1月10日(金)〜16日(木)
【ミシュラン三つ星を55年間持ち続ける名店に巨匠・ワイズマンが迫る】
ドキュメンタリー映画に才能と人生を捧げ続け、2014年にヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞、2016年にはアカデミー賞名誉賞を受賞し、〈現存する最も偉大なドキュメンタリー作家〉の称号を手にしたフレデリック・ワイズマン監督。1967年に発表された第1作目から、ナレーション・インタビュー・音楽は一切なしという、当時も今も革新的なスタンスを貫く唯一無二のフィルモグラフィーで、全世界から敬愛される巨匠だ。バレエ・美術などのアート分野から、医療・教育・行政など福祉分野まで、あらゆる業界に踏み込んできた巨匠が、94歳にしてはじめて料理芸術の世界に挑んだ。
ワイズマン監督がカメラを向けたのは、55年もの間、ミシュラン三つ星に輝き続けるフレンチレストラン〈トロワグロ〉。今から4年前、トロワグロで友人とテーブルを囲んだワイズマン監督が、レストランで繰り広げられたもてなしと料理という“芸術”に心を打たれ、その場でドキュメンタリー映画を撮らせてほしいとオファー、4代目シェフのセザール・トロワグロが快諾し実現した。2022年からスタートした撮影と編集を経て完成した本作は、2023年全米映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞を始め、数々の誉れ高いドキュメンタリー映画賞を独占している。
数ある三つ星レストランの中でも、世界の美食家たちが生涯で一度は訪れたいと願うことでも名を馳せる〈トロワグロ〉とは、トロワグロ・ファミリーが、1930年にフランスの中部で創業したフレンチレストランだ。映画では、2017年に建築家パトリック・ブシャンがウーシュに建てた、周囲の自然と解け合いながらそこにモダンな一筆を加えた新しいレストランを主な舞台に、オーナーシェフ3代目のミッシェルと4代目のセザール、さらにスタッフたちの終わりのない食への追及の日々を捉える。
マルシェでの日々の仕入れ、開店前の予約客のアレルギーとメニューの確認、ステージのように広々とした厨房で、司令塔の指示のもと多様な国籍の料理人たちが丹念に調理する過程、ホール担当の洗練されたサーブと心躍る料理のプレゼンテーション、博識と感性に基づいたソムリエのワインへのコメント、テーブルに立ち寄り客を会話でも楽しませるシェフ──これらレストランの1日が、朝から夜へと縦の軸として描かれていく。
一方、点描のようにアクセントとなるのが、新しいメニュー開発への飽くなき挑戦だ。かつてない組み合わせや味つけが閃く瞬間、繰り返される試作と試食、忌憚なきディスカッションという創造の時間だ。観る者は、天性の才能と途方もない努力から、芸術作品が誕生するエキサイティングなプロセスに立ち会うことになる。
現代の真の美食とは、環境と未来を守ることも視野に入れなければならない。名立たるレストランなら、真っ先に向き合うパーマカルチャーに取り組む姿も描かれる。新鮮で安全なことはもちろん、環境を破壊しない方法で育てられ、作られた食材を手に入れるため、シェフ自らが有機農園やオーガニックの牧場、チーズ工場などに直接足を運び、生産者の想いにじっくりと耳を傾け、そのスピリットに共鳴する姿にも密着する。こうして、ミシュランのグリーンスターを獲得した所以が証明されるのだ。
家族で始めたレストランが創業以来94年間、なぜ変わらず愛され続けてきたのか──その秘密が今、明かされる。スクリーンの前の私たちも夢のテーブルについた客の一人となり、料理の美しさに目を見張り、映像が伝えるワインの香りに陶然となり、時に繊細で時に大胆な味わいへのイマジネーションにため息をつく。かつて日本にも出店していた親日家でシソ愛好家のミシェルの日本でのエピソードには、思わず笑みがこぼれるだろう。
五感を刺激し心を豊かにする、現代最高峰の三つ星レストランへの至福の映像旅行を、あなたに──。
出演:ミッシェル・トロワグロ、セザール・トロワグロ、レオ・トロワグロ、マリー=ピエール・トロワグロ
製作・監督・編集:フレデリック・ワイズマン
2023年/240分/アメリカ/ビスタ
配給:セテラ・インターナショナル
【上映時間】12:30(〜16:45)
※10分間の途中休憩がございます。
ご予約はお電話(088-824-8381)または、メール(info@kinemam.com)にて承ります。
特別鑑賞料金
一般:2,800円 シニア・学生:2,500円 障がい者・高校生以下:2,000円
会員:2,300円
【特典付き】前売鑑賞券(2,500円)劇場窓口にて販売中
詳細はこちら
※特別興行につき、ご招待券のご利用不可、サービスデー適用外となります。
予めご了承ください。
「SUPER HAPPY FOREVER」 近日順次上映
【青春期の終わりを迎えた人々の“奇跡のような幸福なひととき”】
第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門正式出品作『息を殺して』や、第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品されたダミアン・マニヴェルとの共同監督作『泳ぎすぎた夜』など、世界が注目する五十嵐耕平監督による待望の長編最新作。
昨年、第71回サン・セバスチャン国際映画祭でプレミア上映された短編映画『水魚之交』を基に製作した本作にはダミアン・マニヴェルも共同プロデューサーとして参加し、ポストプロダクションをフランスで行うなど、日仏合作での製作が進められた。
短編に引き続き佐野役を『TOCKA [タスカー]』や『愛にイナズマ』、『浜の朝日の嘘つきどもと』での好演も光った佐野弘樹が、宮田役を『サボテンと海底』や「TOKYO VICE Season2」、濱口竜介監督『悪は存在しない』で強烈な印象を残した宮田佳典が務める。そして、今泉力哉監督『猫は逃げた』で注目を集め、近年では『走れない人の走り方』など話題作への出演が続く山本奈衣瑠が凪役を演じた。
本作では5年前と現在という2つの時間の中で、「青春期の終わり」を迎えた人々の奇跡のようなひとときを、さりげなくも鮮やかに記録した。
〈STORY〉
2023年8月19日、伊豆にある海辺のリゾートホテルを訪れた幼馴染の佐野と宮田。
まもなく閉館をするこのホテルでは、アンをはじめとしたベトナム人の従業員たちが、ひと足早く退職日を迎えようとしている。佐野は、5年前にここで出会い恋に落ちた妻・凪を最近亡くしたばかりだった。
妻との思い出に固執し自暴自棄になる姿を見かねて、宮田は友人として助言をするものの、あるセミナーに傾倒している宮田の言葉は佐野には届かない。
2人は少ない言葉を交わしながら、閉店した思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて失くした赤い帽子を探し始める。
出演:佐野弘樹、宮田佳典、山本奈衣瑠、ホアン・ヌ・クイン
監督・脚本:五十嵐耕平
2024年/94分/日本・フランス/ビスタ
配給:コピアポア・フィルム
「キノ・ライカ 小さな町の映画館」 近日順次上映
【名匠アキ・カウリスマキの映画館キノ・ライカへようこそ】
1983年、初の長編劇映画監督作『罪と罰』がフィンランド国内で評価される。1986年の『パラダイスの夕暮れ』が東京国際映画祭やカンヌ国際映画祭に出品され、国際的に注目を集めた。そして1990年に『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』が世界中でヒット。また2017年に引退を宣言したが、引退宣言を事実上撤回、復帰作にして最新作『枯れ葉』(2023年)も記憶に新しいフィンランドを代表する映画監督アキ・カウリスマキ。
彼は作家で詩人のミカ・ラッティと共に2021 年 10 月 8 日にキノ・ライカを開館。
ワインバーや川沿いのテラスを併設し、毎月コンサートを開催しているほか展覧会なども行うなど、街の複合文化施設としての役割も担っている。
北欧フィンランドの鉄鋼の町カルッキラ。深い森と湖と、今は使われなくなった鋳物工場しかなかった小さなその町に、はじめての映画館「キノ・ライカ」がまもなく誕生する。自らの手で椅子を取りつけ、スクリーンを張るのは映画監督のアキ・カウリスマキと仲間たち。
キャデラックにバイク、ビールと音楽。まるでカウリスマキの映画から抜けでたような町で、住人たちは映画館への期待に胸をふくらませ、口々に映画について話しだす…。
これは豊かな自然のなかで芸術を愛して暮らす人々の、映画とカルッキラという町への想いをめぐる物語。そこにはカウリスマキの理想の映画館「キノ・ライカ」が町にもたらした変化の兆しと、これからの映画館の可能性がとらえられている。カウリスマキ作品でおなじみの俳優やスタッフ、そして盟友ジム・ジャームッシュも登場する、映画愛にあふれたカウリスマキからのプレゼント。
出演:アキ・カウリスマキ、ミカ・ラッティ、カルッキラの住人たち、ジム・ジャームッシュ
監督・脚本・撮影・編集:ヴェリコ・ヴィダク/脚本:エマニュエル・フェルチェ
2023 年/81 分/フランス・フィンランド/2.00:1
配給:ユーロスペース
「映画を愛する君へ」 近日順次上映
【アルノー・デプレシャン監督最新作!映画愛に溢れたシネマエッセイ】
19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画の魅力と魔法を語り尽くす、映画への深い愛と映画館への賛美に満ち溢れたシネマ・エッセイ。デプレシャン監督は、『キングス&クイーン』(04)や『クリスマス・ストーリー』(08)などで、数々の映画賞にノミネートされ、日本の映画ファンからも人気高い名匠。本作も、第77回カンヌ国際映画祭で特別上映され、最優秀ドキュメンタリー賞にあたるゴールデン・アイ賞にノミネートされた。映画ファンから絶賛の声が上がった話題作。
デプレシャン監督の過去作『そして僕は恋をする』(96)や『あの頃エッフェル塔の下で』(15)でマチュー・アマルリックが演じる主人公ポール・デュダリスに、監督自身を投影した自伝的映画になっている。初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、映画史と共に描く。マチュー・アマルリックは本人役として出演。祖母役をジャン・ユスターシュ監督の傑作『ママと娼婦』(73)で知られるフランソワーズ・ルブランが、14歳のポール役を『落下の解剖学』(23)の視覚障害のある息子役で注目を浴びたミロ・マシャド・グラネールが演じている。
本編には、映画史に功績を残した50本以上の名作が登場。リュミエール兄弟による映画の発明から、アベル・ガンスの『ナポレオン』(27)、フランク・キャプラ『或る夜の出来事』(34)、アルフレッド・ヒッチコック『北北西に進路を取れ』(59)、黒澤明『乱』(85)、クロード・ランズマン『SHOAHショア』(85)、ジェームズ・キャメロン『ターミネーター2』(91)、『ノッティングヒルの恋人』(99)など、世界中の様々なジャンルの映画が洪水のようにスクリーンを駆け巡る。そのほか、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマンらの映画も登場。デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カヴェルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も借りながら、“映画とは何か”に迫る。
さらに、ドラマとドキュメンタリーを融合したハイブリッドな構成で綴られる。フィクションのシーンには、一般の観客が映画体験エピソードを語るインタビューシーンが挟まれる。「本作の主題は“私たち”映画の観客」と監督が語るように、観客の視点で映画愛が描かれる。シネ・ヌーヴォ(大阪)やアンスティチュ・フランセ(東京)など、日本の映画館の登場も見逃せない。映画は私たちの人生にどれほどの影響をもたらすのか——。デプレシャン監督が贈る映画と映画館へのラブレターを、ぜひ映画館で受け取って欲しい。
出演:ルイ・バーマン、クレマン・エルヴュー=レジェ、フランソワーズ・ルブラン、ミロ・マシャド・グラネール、サム・シェムール、ミシャ・レスコー、ショシャナ・フェルマン、ケント・ジョーンズ、サリフ・シセ、マチュー・アマルリック
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
2024 年/88分/フランス/シネマスコープ
配給:アンプラグド
「くすぶりの狂騒曲」 近日順次上映
【高知出身、和田正人さん主演最新作!】
2014年「大宮ラクーンよしもと劇場」オープンに合わせて、東京の劇場でくすぶり続けていた「マヂカルラブリー」「GAG少年楽団」「タモンズ」などの芸人たちが集められた。「島流し」と揶揄されながらも、大宮を盛り上げるためにユニット「大宮セブン」を結成。当初は劇場にお客さんが全く入らず、ほぼ無観客ライブの毎日だった。そのため、「大宮セブン」のメンバーたちは自ら煙の中での営業、雨の中傘をさしての営業、ただのカレー屋でほぼ外国人の中での営業など東京では考えられない数々の修羅場をくぐって、今では多くのメンバーは数々の賞レースで結果を残し、テレビでも活躍。そんな「大宮セブン」の初期メンバーでありながら、仲間の活躍を横目に、飛躍のきっかけを掴めない状況に葛藤するタモンズを中心に成功を夢見る芸人たちの軌跡をたどる大人たちの青春群像劇が誕生した。
本作の中心となる芸人コンビ・タモンズを演じるのは舞台「駆けぬける風のように」で文化庁芸術祭 演劇部門「新人賞」受賞し、TBS金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』など数々のドラマ、映画で活躍する和田正人がツッコミの大波康平を演じ、一方、ボケの安部浩章は入江悠監督の出世作である映画『SR サイタマノラッパー』で主演を務め、その後も吉田恵輔、行定勲、犬童一心、藤井道人など数々の名監督の作品に出演する駒木根隆介が演じる。他にもチュートリアルの徳井義実、岡田義徳など実力派俳優が参加。
歳を取るにつれて抱いていた夢を諦めたり、今の人生に無理やり納得をしたりしていませんか?本当に自分がやりたかった事がやれていますか?夢を抱いて輝いていた昔を懐かしく振り返ってばかりいませんか?何か一つでも当てはまった人へ贈る人生応援ムービー、それが映画「くすぶりの狂騒曲」です。
〈STORY〉
「大宮セブン」が活動する大宮ラクーンよしもと劇場は少ない客、会社からの非難や悪口などなどお世辞にもその扱いは良いものとは言えなかった。追い打ちをかけるようにコロナ禍により劇場などの活動が停止し、収入低下などにより彼らの不安や状況は悪化の一過を辿っていた。
そんな中、「大宮セブン」メンバーの「すゑひろがりず」がM-1グランプリで決勝進出をはたし、YouTubeでの活動から人気を得て大宮セブンの活動にも変化の兆しが見え始める。さらに続くようにR-1でのマヂカルラブリー野田の優勝、M-1グランプリでマジカルラブリーが優勝を果たし一気に大宮に注目が集まる。メンバーも各賞レースで結果を残し、大宮セブンの躍進が始まる。しかし初期メンバーであるタモンズは仲間の活躍を横目に、飛躍のきっかけを掴めないまま、手掛かりを掴もうともがき苦しんでいた。現状を打開するためにコンビ名を改名したり、果てには新たにメンバーを追加してトリオになろうとしたり、明確な指針もないまま迷走を始める。
そんな彼らの様子を間近で見ていた大宮セブンのメンバーは夜中に相談に乗ったり、自身の問題と重ねたりしながらタモンズを何とか支えるのであった。メンバー間の友情、応援などを経てタモンズは芸人を目指した時の純粋な気持ちを思い出し、ラストイヤーのM-1へ最後の挑戦に挑むのであった。
出演:和田正人、駒木根隆介、辻凪子、土屋佑壱、永瀬未留、徳井義実(チュートリアル)/岡田義徳
監督:立川晋輔
2024年/107分/日本
配給:イオンエンターテイメント、吉本興業